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第1部 一章【財前姉妹】その15 第伍話 ダブリーでも読めること

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-08-30 10:00:00

207.

第伍話 ダブリーでも読めること

「では私たちは放送席につきましょうか」

「そうですね、小林プロ」

────

『さあ、準決勝A卓一回戦が始まりました。さっそく選手たちの配牌を見てみましょう!』

(放送席からの声はスタジオの卓に着いてる選手たちには届かない)

『おっ!? 成田さん、北家スタートの新田選手を見てください!』

新田手牌

二二三三④④⑥77東東南西 ドラ西

『配牌イーシャンテン!』

『さあ、第一ツモでテンパイするか!?』

 ググッと心なしか力強くツモりに行く新田。そして引いたのは――

ツモ西

『ドラ引いて張ったーーーー!!』

『いえ、でもこれ難しいですよ』

『えっ?』

 見てみると親が第1打で南を捨てていた。そしてドラ表示牌も南。つまり南はすでに残り1枚しかない。

『地獄の南か⑥筒か。ダブリーなのかダマなのか』

「……リーチ」

打南

 新田は悩んだ末に⑥筒単騎のダブリーとした。それを鋭く読んだのが女王位の白山シオリだった。

(この男、手つきや雰囲気からして素人ではない。それが長考してダブリー……。アマチュア予選から準決勝まで残ったんだからテンパイに気付くのが遅れましたとかいうレベルの打ち手ではないだろうし、ダブリーなんだからダマにするかとかで悩んだってケースもあまりない。そうなると『待ち』の選択で悩んだと考えていいだろう。そして打南。2枚切れてる南にするかどうかで悩んだんだから単騎だ。ノベタンなら地獄待

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